大学の図書館で哲学系の知識と理解を深めたいと思って手に取った本。
思った以上に影響を与えてくれたのでレビュー記事にしました。
特にテヘランの死神のお話は印象的です。
夜と霧

- 作者: ヴィクトール・E・フランクル,池田香代子
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2002/11/06
- メディア: 単行本
- 購入: 48人 クリック: 398回
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「夜と霧」は英訳で「man's searching for meaning」と題されている作品。
「言語を絶する感動」と評されている本書はみすず書房から出版された150頁ほどの20世紀を代表する作品です。
第二次世界大戦時にナチスによって強制収容所に連行された筆者:ヴィクトール氏は体験を通して人々の精神も分析したことで「人生の意味」や「精神的内面の分析」など一緒に過ごしたからこそ見えた人間の精神面を記述した。
この本は心のありようで人生だけではなく、生きるか死ぬかまでに影響を与えてくれることを教えてくれる。
生きる意味を問うとは?
いちばんメッセージ性が強かったのがこの問でした。
生きる意味に対しての問いを180度転回する必要が私たちにはあるようです。生きていることで何かに期待するのではなく、生きることが私たちから何を期待しているかが重要。
もし、あなたが絶望の淵にいても、とっても辛く苦しんでいようが、死にたくなろうが、これからの未来に期待するのではなく、生きる理由や目標も持つことが大切。
それはつまり、
生きることの意味を問うことをやめて、自身がこれらの問いの前に立っていることを知ることである。
筆者がなぜこのような考えに至るのかも強制収容所での体験から見出したものであり、本書を読んでいると十分に理解できます。現代の私たちとの状況は違いますが、違うからこそ真剣に考えてみることで違った答えや新しい自分の考えが生まれるかもしれませんね。
テヘランの死神
以下の文章の引用元:「夜と霧 新版」ヴィクトール・E・フランクル/池田香代子訳 みすず出版 2002年
裕福であるペルシア人が、召使をしたがえて屋敷の庭をそぞろ歩いていた。すると、ふいに召使が泣き出した。今しがた死神とばったり出くわして脅された、と言うのだ。召使はすがるようにして主人に頼んだ、いちばん足の速い馬をおあたえください、それに乗って、テヘランまで逃げていこうと思います、今日の夕方までにテヘランにたどりつきたいと存じます。主人は召使いに馬をあたえ、召使いは一瀉千里にかけていった。
館に入ろうとすると、こんどは主人が死神に会った。主人は死神に言った。
「なぜわたしの召使いを驚かしたのだ、恐がらせたのだ」
すると、死神は言った。
「驚かしてなどいない。恐がらせたなどとんでもない。驚いたのはこっちだ。あの男にここで会うなんて。やつとは今夜、テヘランで会うことになっているのに」
心に残った文章
本書の中には教訓になるような昔話や偉人の引用文もあります。これらが本の後半に出てくるんですが、心に染みます。生き方、運命、苦悩など人々を悩ませるものに対して鋭く考察されています。
以下の文章の引用元:「夜と霧 新版」ヴィクトール・E・フランクル/池田香代子訳 みすず出版 2002年
ドストエフスキー
「わたしが恐れるのはただひとつ、わたしがわたしの苦悩に値しない人間になることだ」
スピノザ『エチカ』
「苦悩という情動は、それについて明晰判明に表象したとたん、苦悩であることをやめる」
ニーチェの格言
「なぜ生きるかを知っている者は、どのように生きることにも耐える」
感想
読んだ後の感動が未だに残っています。悲しくて、同情して、涙してなどではなく、筆者の体験記を通して私たちへのメッセージが力強いこと。
生きる中で希望や願いに身を任せるのではなく、精神も強く保つほどの強い信念や生きる理由を持つことの大切さを教えてくれます。
私は序盤から書かれている、人々の精神の変化に興味が惹かれました。
中でも、ある女性が強制収容所に居ながら「この運命に感謝します」と述べる体験記は彼の精神分析から見ると精神の内面性をより深めていったと分析しています。普通なら精神がおかしくなり、精神から肉体的活動や生活も幼稚化してしまう中で、自分自身を見失わずいることの難しさと自分自身を知っていることの偉大さがわかります。この文章のあとにある、「第二章 収容所生活 暫定的存在を分析する」に書かれている筆者の精神科医としての精神分析は必見です。
この本は難しくなく、読みやすい体験記として書かれています。ページ数も多くないので軽く読むのに適していますが、膨大な考えや感情を与えてくれる良書だと思います。

- 作者: ヴィクトール・E・フランクル,池田香代子
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